サイクリストが見た、世界の自転車まちづくり・地域づくり

台湾でブームの台湾一周サイクリング「環島」1

2024年10月19日

 台湾では今、サイクリングがブームで、日本にもしまなみ海道やビワイチなどに多くの方が来られています。
 台湾一周サイクリング「環島(ホワンタオ)」が人気で、距離は1000kmほどに及び、自転車で長距離を走り慣れていない人にはかなり過酷な挑戦になると思われるにもかかわらず、年間3万5千人ほどが一周していると言われています。

 台湾と日本のハーフであり、作家かつ女優や歯科医としても活躍されている一青 妙(ひとと たえ)さんは、自ら自転車で台湾一周をされ、その経験を元に、「『環島』ぐるっと台湾一周の旅」という本を出されています。その中には、台湾の人は「台湾人になるための儀式」として、「生涯において、3つのことをやり遂げなければならない。」と書かれています。その3つとは、

・標高3952mの台湾最高峰「玉山」を登ること
・日月潭の湖岸から対岸まで約3キロを泳いで渡ること
・自転車で台湾を一周する「環島」を達成すること

であり、また、

「『環島』は、家族旅行や大学生の卒業旅行、中学生の学校行事、新入社員の研修などに取り入れられ、高齢者や身障者、小学生たちにも広がり、成人を迎える若者の「儀式」になるほど台湾人社会で浸透した。」

とのことです。

「環島」が盛り上がったきっかけは、2007年に聴覚障害を持つ大学生が自転車で台湾一周をする映画「練習曲」がヒットしたことです。それに感動したジャイアントの劉金標会長が73歳で台湾一周を成し遂げたことでサイクリングブームが涌き起こりました。そして劉会長自らが台湾の自転車利用環境整備を積極的に推し進め、4,000kmを越える自転車道が整備されました。2015年には全長約1,000キロの「環島1号線」が完成しています。
 台湾観光局から「台湾一周サイクリングガイド」という110ページもある冊子が無料で配布され、ウェブでもPDFで公開されています。
https://jp.taiwan.net.tw/att/files/自行車手冊-單車騎士夢想國境-日文_2.pdf
 そこには、モデルルートとして、10日間での一周が紹介されています。

 私は、この冊子を参考に、2019年に台湾を一周してきました。台湾の古都、台南や、台湾最南端のリゾート墾丁(ケンティン)、最大600mにも及ぶ深い谷の中腹を削って作られた道を走れる太魯閣(タロコ)峡谷などに寄り道し、雨に降られて停滞する日もあったため、18日ほどかけました。その一周ルートの様子を紹介していきます。

「台湾一周サイクリングガイド」より「環島」モデルルート地図

台北市内から、まず河川敷の公園内を走って行く

橋には、自転車に乗ったまま上がれるようにスロープが設けられている

自転車ごと入れるトイレもあった

自転車用の標識も出ている

「環島1号線」は、自転車専用道路や、車の少ない裏道のところもありますが、幹線道路が主です。交通量は多いですが、台湾はスクーターが多く走っているため、幹線道路の大部分には2輪用レーンが設けられており、郊外に出るとスクーターは少ないので、自転車は余裕を持って走れます。

「環島1号線」の多くの部分はこのような道 自転車用の路面標示があるところは、2輪レーン

自転車とオートバイのレーンが分けられているところもある

橋の上で、車とオートバイと自転車が物理的に分離されているところもあった

橋の上にもかかわらず、こんなに広いところもあった。なぜここまで広くする必要があるのか?

 大きな交差点では、オートバイや自転車が車の前で信号待ちできるようになっていました。ヨーロッパによくある「バイクボックス」や「バイクポケット」と呼ばれるものと同じです。ただし、台湾の西海岸は街が続き、信号待ちが多く、なかなか進みませんでした。やはり街中は走りにくいです。

「台湾シリコンバレー」と呼ばれる新竹の街中にて

自転車専用道路が整備されているところもあった

台北から20kmちょっとのところにある山峡老街には、中華民国建国当時の古い街並みが保存されている

 台湾では、警察の派出所がサイクリングのサポートステーションになっていて休憩が可能です。空気入れや工具が置かれていて、水やお湯もいただけます。

派出所の休憩場所を示す標識

次回に続きます。

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