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サンティアゴ巡礼路、フランス人の道を走ってきた1─サンティアゴ巡礼路とは?

2025年3月8日

 「サンティアゴ」とは、イエスの十二使徒の一人、聖ヤコブのスペイン語名で、813年にスペイン北西端近くのサンティアゴ・デ・コンポステーラで聖ヤコブの墓が発見され、その場所に教会を建てられました。12世紀には年間50万人もの巡礼者がサンティアゴの地を訪れたと伝えられますが、その後巡礼は一度下火になりました。

 1993年「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路:カミノ・フランセスとスペイン北部巡礼路」として世界遺産に登録、また、サンティアゴ巡礼路を採り上げた書籍が世界的にヒットしたこともあり、その後巡礼者が急増しました。なお、「カミノ」というのは、スペイン語で「歩く道」の意味で、「The」に当たる定冠詞の「El」を付けて、エル・カミノ(El Camino)でサンティアゴ巡礼路を指します。

 徒歩や馬なら100km以上、自転車なら200km以上を巡礼し、サンティアゴにたどり着くと「コンポステーラ(巡礼証明書)」がいただけます。巡礼証明書の年間発行数は、コロナ前の2019年には約35万件にも及びました。そのうち約二割が自転車による巡礼だというデーターがあります。

 ヨーロッパ各地からサンティアゴに続く多くの巡礼路がありますが、その中で一番人気なのはフランスのスペイン国境近くの村、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴまで約800kmの「フランス人の道」です。その800kmを30日から40日かけて歩くのが一般的です。

 私は、2022年5月から6月にかけて、自転車でフランス人の道を走り、その後サンティアゴからポルトガル人の道を逆方向にポルトガルのポルトまで走りました。

ヨーロッパ各地からサンティアゴに続く道
NPO法人 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会ウェブサイト〈https://camino-de-santiago.jp〉の地図に藤本加筆

 まずは、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーの村にある巡礼事務所に行き、「クレデンシャル」と呼ばれる巡礼手帳(3ユーロ)をいただきます。これを受け取ることで、道中の巡礼宿に泊まれたり、博物館などの割引を受けられます。道中の宿、観光案内所、教会、店などにスタンプが置いてあり、それを巡礼手帳に押すとそこを巡礼した証明となります。

趣のあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーの村

巡礼事務所前で受付を待つ人々

巡礼事務所での受付の様子

クレデンシャル(巡礼手帳)

クレデンシャルにスタンプを押していく

 また、巡礼手帳と共に、アルベルゲ(巡礼宿)の場所と、それぞれの収容人数のリストの紙をいただけます。

 「巡礼宿」というと古い建物を連想しますが、実際には新しい所が多く、部屋に2段ベッドが並ぶユースホステルのような感じです。公営なら5ユーロ、民営のところでも15ユーロ程度と格安で泊まれます。泊まっているのは全員巡礼者なので、同室の人々と話も盛り上がり、このような交流も巡礼の楽しみの一つです。

 元々、巡礼宿は予約ができず、その日毎の早い者勝ちで、定員いっぱいになれば断られていたそうですが、最近は民営の所を中心に、ネットで予約できるところも増えています。

ベロラドのアルベルゲ

アストルガのアルベルゲ

 巡礼宿以外にもホテルやキャンプ場も各所にあり、私は、ほぼキャンプと巡礼宿が半々、1泊だけホテルに泊まって走りました。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーのキャンプ場

 巡礼路の道中には、各所に道案内の標識が立っており、比較的迷わずに歩ける(走れる)ように整備されています。


「モホン」と呼ばれる道標

パンプローナにて 自転車道上の表示

 ホタテ貝のマークがシンボルで、標識に描かれている他、多くの巡礼者がバックパックにホタテ貝を付けています。このホタテ貝は、巡礼事務所で少額の寄付をするといただける、また道中の土産物店でも売られています。

バックパックにホタテ貝を付けた巡礼者

 徒歩と自転車は別の道が指定されているところが多く、徒歩はおもに巡礼専用の未舗装路、自転車は舗装路(車の道)を走るところが多くなっています。ただし、自転車も徒歩用の未舗装路を走るよう指定されているところもあり、マウンテンバイクですべて徒歩用の道を走る人もいます。

右が徒歩用の道、自転車は左の車道を行く ロンセスバジェスにて


自転車も未舗装路を走る所 ログローニョ近郊にて

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