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サンティアゴ巡礼路、フランス人の道を走ってきた5─サンティアゴ巡礼路の魅力とは

2025年4月5日

 2024年度には巡礼者数が50万人にも達したというサンティアゴ巡礼路。その50万人が最低4日から、何十日もかけて巡礼するのですから、延べの巡礼者数は何百万人にもなります。なぜそんなに人気なのかを観光振興を進める側からの目線で私なりにまとめてみました。
 サイクルツーリズムのコース作りにも参考になるでしょう。

1.スタート・ゴールのはっきりしたわかりやすいルート

 人に説明する場合にもわかりやすいですし、歩き(走り)切ったんだという達成感にも繋がります。
 人は何かに挑戦する際に、わかりやすい目標があるものを選びます。
 ビワイチや四国八十八ヶ所巡りのような一周コースも同様にわかりやすく、こちらはどこから始めるかを自由に選べるという良さがあります。

2.歴史や伝統の裏付けがあること

 これもそのコースを選ぶ際の動機になりますし、そういったルートは途中に歴史的な遺産も多く、その地域の歴史や文化を味わえます。
 ただし、巡礼自体は本来宗教的なものですが、実際に巡礼している人を見るとスポーツや旅の感覚の人が多く、中にはクリスチャンでない人もいます。宗教的な意味は薄れているのですが、それだからこそ世界中から人が集まるものになっています。クリスチャン以外の人が巡礼してくることも、キリスト教の考え方を多くの人に知ってもらう機会になると、教会も許容しているとのことです。

3.時間がかかり、適度な苦労があること

 達成感を得るためには、ある程度の苦労が必要です。フランス人の道はアップダウンが多く、自転車に乗り慣れている私にとってさえもかなりキツい道でした。ただし、許容可能な苦労の度合いやかけられる時間は人によって違います。サンティアゴ巡礼路の場合は、徒歩や馬の場合は100km以上、自転車の場合は200km以上という巡礼証明書取得の条件があります。ただし巡礼路は最長のものでは2000km近くにも及び、また自宅から出発してそれ以上の距離を巡礼する人もいます。人によって巡礼の距離を選ぶことで、苦労やかける時間の度合いを選択できることが多くの人を引きつける要因になっています。

4.達成証明

 達成感を得るために、それを証明するものがあることは重要です。サンティアゴ巡礼では、教会が巡礼証明書を発行しています。また、別途巡礼した距離を示す距離証明書も発行しており、これはより長い距離、長期間の巡礼をするための動機になります。

5.スタンプラリー的な、途中の経由地点の証明(コレクション)

 巡礼証明書にスタンプを押していくことでわかりやすい達成証明になります。また、スタンプはそれが置いてある場所によってデザインが変わり、それが多くのスタンプを集めたいという動機になり、またルート上の店や観光スポットに立ち寄る動機にもなります。

6.スタートからゴールまでの一連のストーリー

 巡礼事務所で巡礼手帳を取得することから始まり、長期間かけて巡礼を行い、最後に巡礼証明書を得てミサに出席するという、一連のストーリーが用意されており、それによって巡礼達成の大きな感動を得ることに繋がります。

7.案内標識、宿泊施設、店、レンタサイクル、荷物運搬システム、ツアーエージェントなどインフラの整備

 多くの人が巡礼できるように、様々なインフラが整備されています。道に迷わないための案内標識、1日で無理なく歩ける距離毎に安価に泊まれるアルベルゲ(巡礼宿)があります。その他ホテルやキャンプ場も用意されています。沿道にはカフェやレストランも多くあります。サンティアゴ巡礼専門のツアーエージェントが多くあり、お願いすれば出発点の宿までレンタサイクルを送ってくれ、最後はサンティアゴの宿に自転車を置いておけば後で回収してくれます。途中の宿の予約もしてもらえます。朝、宿に荷物を置いておくとその日のうちに次の宿まで荷物を運んでくれる運搬システムもあります。

8.人が交流するしくみがあること(巡礼宿、カフェ等)

 歩いて巡礼していると、ペースが同じ人と何度も会ったり、一緒に歩くことが多くなります。またアルベルゲでは多くの人が同室に泊まっており、一緒に自炊をしたり食事をすることでも交流が深まります。皆が巡礼達成という同じ目標に向かっているため、自然と話も弾みます。世界各地から来た人々との交流は巡礼の大きな楽しみとなります。

9.多くの人が集まることでの、皆でひとつの目的に向かう一体感

多くの人が同じ目標に向かっていくということが気持ちを高揚させ、さらなる楽しさと達成感に繋がります。

10.ルートのバリエーションを増やす

フランス人の道だけでなく、ポルトガル人の道、北の道、銀の道など多くのルートのバリエーションを増やすことで、「次はこのルートに挑戦してみよう」というリピーターの確保に繋がります。

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