サイクリストが見た、世界の自転車まちづくり・地域づくり

ヨーロッパでは、ガイド付きではなく、自分たちだけで走るセルフガイドツアーが主流

2025年4月19日

 この連載の「パリでガイド付きE-Bikeツアーに参加した」で紹介したように、ヨーロッパの観光客が多く来る大きな街では、たいてい自転車で行くガイド付きのシティーツアーが多くあります。ポルトでもガイド付きシティーツアーの参加者らしき人々を見かけました。ポルトは、都市圏では人口160万人の観光都市です。ただし、小さな町や郊外ではガイド付きツアーはまず見かけず、自分たちだけで走るセルフガイドツアーが主流です。

ポルトで見かけたガイド付きツアーらしき人々

 私がこのことに気づいたのは、2017年にドイツに行ったときです。琵琶湖でのサイクルツーリズム推進の参考にするために、ドイツ最大の湖でスイスとオーストリアの国境にあるボーデン湖で、サイクルツーリズムに関わる事業者や団体にヒアリングを行いました。その時通訳とコーディネーターをお願いした、ドイツのカールスルーエ在住の環境ジャーナリスト松田雅央さんに、「ボーデン湖でのガイド付きサイクリングツアーに参加したいので探していただけないか」とお願いしました。日本ではサイクリングガイドの養成などが各地で行われているので、本場のヨーロッパなら多くのガイド付きツアーがあるだろうと思っていたのです。
 しかし、いくら探してもガイド付きツアーは見つからない。見つかるのはセルフガイドツアーばかり。散々探していただいて見つかったのは、ADFC(全ドイツ自転車クラブ)のフリードリヒスハーフェン支部がボランティアで開催するツアーでした。ツアーの参加者は高齢の方ばかり5名ほどで、E-Bikeでの参加が多かったです。1日かけて50kmほどを走り、いくつかの古城をめぐるツアーで、雰囲気は日本でも多く開催されているボランティアでのサイクリングツアーと似たような感じでした。

ADFCフリードリヒスハーフェン支部主催のツアーの様子

 ボーデン湖畔で最大のサイクリングツアー事業者、ラートベーク・ライゼン社でお話しを伺ったところ、「当社ではガイド付きツアーは1%で、ほとんどはセルフガイドツアー」とのことでした。ラートベーク・ライゼン社のツアーは、お客さんからの要望を聞いてコースを組み、ホテルの予約、ホテル間の荷物の輸送を基本に、オプションとしてレンタサイクルの用意や食事、船によるショートカット、博物館見学などの手配を行います。お客さんの旅行スケジュールやコースの見どころ案内、地図、ホテルや観光スポットの予約証などを100〜200ページの「ロードブック」にまとめ、お客さん宛に送付し、ツアーへの参加者はそれを見て自分たちだけで走ります。なお、「ロードブック」は、開いた状態で自転車のフロントバッグの上に付いた地図入れに入れられるように、横長のリング閉じになっています。

ラートベーク・ライゼン社

ラートベーク・ライゼン社の「ロードブック」表紙

「ロードブック」の中身

 もう一つ日本人の感覚と大きく違うのがツアーの長さで、5・6泊かけてボーデン湖を一周するのが主流です。1日に走る距離は、50km足らず。3日間のツアーからありますが、その場合は湖の一部を船でショートカットします。「かつて2日間の短いツアーを開催したことはあるが、人が集まらないのでやめた」とのことでした。

セルガイドツアーを楽しむ人々

 前回ご紹介した、サンティアゴ巡礼路ポルトガル人の道で出会った人々も、サポートカーは付いていますが、ガイドは一緒には走らないので、セルフガイドツアーの一種と言えるでしょう。

 台湾でも台湾一周中のツアーの方々にお会いしたことがありますが、サポートカー付きで、ガイドは無しのツアーでした。

台湾で出会ったサイクリングツアーの人々

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